あかぐらやまのおにがみ

  

  
 津軽平野にそびえ立つ岩木山は、美しい富士山型の姿から津軽富士の名で親しまれている。
岩木山の山頂は大きく三つの峰に分かれており、中心の主峰が岩木山、その西南が鳥海山、北東が巌鬼山(赤倉山)となっており、この三峰はセットにされ、岩木山三所大権現と呼ばれ、拝まれた。
 また、古くから山岳信仰の場でもあり、多くの人々からの信仰を集めるとともに修験者の行場としても知られている。特に、岩木山北東面に位置する赤倉山にある「銚子の口」という行場には大絶壁がそそり立ち、険しい行場ゆえに命を落とす行者もいたという。
 その岩木山には鬼が住むと言われている。昔、岩木山に住んでいた鬼が人々を悩ましており、 これを帝が知るところとなり、江州(滋賀県)の領主、花輪という者がその鬼を成敗するため都より派遣された。
 それに対し、赤倉山に住む鬼は次のように主張する。 「吾れは父大神の命を受け、護国利民の請願ありて、大八州(日本国)の鬼門の地、ここ赤倉山に年久しく住す。古の人は、心直くして、神を敬い和睦して助け合いたり。しかるに今の世の人は、心乱れ、互いに争い、神を敬わず、あまつさえ吾が神洞をけがす。吾が眷属これを憎み、人を懲らしめんがため、即ち騒乱をなす。」
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