じごくへん
 
  
 平安の世のこと 京の都堀川の大殿は 絵師 良秀に地獄変の屏風図を描くよう命じた 良秀は思い悩んだ末 燃える牛車の炎が見たいと申しでる 堀川の殿は良秀の望みどうり 中に罪人をとじこめ牛車もろとも火をかけたのであった
 一心不乱に写し取る良秀であったが やがてその紅蓮の炎にやけ苦しむ人の姿は 良秀の寵愛する実の娘であることに気付いた
 しかし良秀は 地獄の責苦を受けながらも眼光鋭く燃え盛る炎を書き続けたという(芥川龍之介・地獄変より)
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